作家でごはん!鍛練場
小原

桜の咲く頃

自室の棚の上にあるよれた財布からは、春先になると不思議と磯の匂いが香ってくる。
 私は磯の匂いがするたびに、十年ほど前の、彼と対話したカフェでの記憶が鮮明に呼び起こされるのである。
 カフェの窓からは、しきりに光る車のテールランプが見えていた。マフラーから白い煙を出しながらゆっくりと走り行く車から目を背け、私は腕時計を見た。
 注文したアイスコーヒーには水滴がキラリと光り、机にポタポタと落ちていた。
 店の扉が開いた。私は彼の顔を見た途端、待ち合わせの相手だと気付いた。しかしそれよりも早く、彼はこちらに気付いたらしく、私が立ち上がるよりも前に、私に向いて会釈をした。
「初めまして、電話を差し上げた開田です」
 開田さんは柔らかな声色で言った。
 私も立ち上がり、
「初めまして、飯田です。」
 と、我々は簡単に自己紹介を済ませた。
 私は、机を挟んだ向かいの椅子に手を差し、「どうぞ」と促した。
 開田さんは再び一礼して椅子に腰掛けた。澄んだ、穏やかな目がこちらを見ていた。
 私がどう切り出そうか迷っていると、開田さんの方から、
「あなたにようやくお会いできて嬉しく思います。まずは、私の無礼をお許しください」
 俯きがちになりながら言った。
「いえ、私は開田さんに深く感謝しています、本日はありがとうございます」
 私はその他にかける言葉が分からなかった。
 開田さんは、下に向けた顔をこちらに向き直し、先程とは打って変わって、険しい口調で私に語り始めた。
 開田さんはその日、法事の為に働き先の神戸から岡山に帰郷して、終わったあと、幼い頃に良く砂遊びをした砂浜の棕櫚の木陰に腰を降ろしていた。彼は、十月にしては暑い日だったと回顧した。
 開田さんの居た砂浜は、丁度コの字の凹んだ部分で、双方からは腰の低い丘が視界を遮っていた。
 ネクタイを緩め、潮風に当たっていると、沖合から木片のような漂流物が流れているのを目にした。瀬戸内の穏やかな潮流にしては珍しく大きな漂流物だった。波に揺られながら、ゆっくりと近付く漂流物が眼前に迫った頃、酸っぱい臭いが鼻に付いた。そして、開田さんは目の前の漂流物がただの漂流物ではないと悟った。
 そして、それが木片などという普遍的な物ではなく、何かの死体らしい事に気付いた。
 開田さんはゆっくりと死体の方へ近付いた。
 そばへ寄るたびに、異臭は濃くなっていく。そして、魚についばまれて穴だらけの死体を目にして、思わず体が仰け反った。
 それは人の遺体であった。髪は抜け落ち、ガスが体内で膨張した原型も留めない腐乱死体が波打ち際にゆらゆらと揺れていた。服も千切れ、性別も分からない程損傷していた。
 開田さんはその場から逃げるように立ち去り、近くの交番へ駆け込んだ。この謎の腐乱死体は、たちまち小さな漁村中を駆け巡り、地方紙の片隅に概要が掲載された。
 開田さんが腐乱死体を見つける四ヶ月ほど前の五月二十日、二○キロほど離れた海域で、暴風雨の中を無理に出港した遊覧船が岩礁に激突し沈没した事件があった。
 乗組員と乗客は合わせて十二名で、その二日後頃から周辺の砂浜に死体や漂流物が打ち上がるようになった。海上と陸、双方からの捜索で、沈没後二週間で遺留品十八点、遺体五体を回収したが、残り七体は依然行方が分からなかった。
 五月二日のクラッチバッグの遺留品を最後に、沈没船は陸に何も送ってこなくなった。
 そして、十月二五日、開田さんが法事を終えて砂浜に座った日、新たな死体が漂着したのである。
 その日は結局、警察からの聴取が八時間掛かり、ひとまず実家に泊まり、翌日また聴取があり、結局一週間を故郷で過ごした。
 神戸へ帰る日の朝方、最後に、砂浜がよく見える丘へ登った。彼としては思い出深い砂浜だが、腐乱死体によってその思い出は悉く蓋をされ、もはやトラウマのようになっていたのである。
 それを少しでも払拭するため、幼少への憧憬として砂浜を見ておきたかった。
 家族や近所の者から、件の砂浜一帯は規制線が張られていると聞かされていたが、もう規制は済んだらしく、規制線はなかった。
 なにともなしに、ただ呆然と砂浜を眺めていると、黒い物体が打ち上げられているのを見つけた。開田さんはその物体に嫌悪感があったが、一度気になったことは中々忘れられぬ質らしく、自然と目に入る物体に対する興味が肥大化し、結局浜に降りて見に行くことにした。
 近付いてみると、それは財布であった。
 くたびれて革が剥がれた二つ折りの財布が微細な砂の上に蹲っていた。
「飯田さんの前で言うのは憚られますが、あのときは、拾おうか、本当に悩みました。拾ってしまえば、警察に届けなくてはいけない、でも、そのままにしておくと、風化してしまい、財布の持ち主が余りにも可哀想です。かと言って届けに行けば、また面倒になる。岡山で過ごした一週間ですっかり精神を消耗してしまい、もう気力が起きず、再び活力のある日に届ければ良いと思い、警察に届けず持ち帰ってしまったのです」
 開田さんは俯き勝ちになりながら言った。
 私は後ろめたさを抱えているらしい開田さんを少しでも庇うため、
「気持ちはよく分かります」
 と言った。
 開田さんは喋り続けで渇いた喉にアイスコーヒーを流し、悲痛な声で再び話し始めた。
「財布の中を、見てしまったんです。中に、当然保険証や免許証が残っているのを見て、溜まらない気持ちになりました。もちろん、当時はそれが単なる落とし物か、遺留品が判然としませんでしたが、ふと波打ち際に揺れる遺体が思い浮かびました。私は自然と、財布の持ち主を発見したご遺体に結び付けて考えていました。その考えは私の脳裏に癒着して、まさに財布の持ち主を断定めいた推測で決めつけました。
 おそらくあの状態では、身元の特定も困難だと思いました。故人かも分からず、ただ待ち続けるご遺族が余りにも可哀想に思い、私は記憶ではなく物体として、現状のまま少しの間だけでも保管することにしたんです。
 そして、免許証の名前を調べると、沈没船に居合わせた方と同名だと知りました。ニュースには顔写真も出ていましたから、免許証と比較すると、同一人物であると確信を得ました。なんとかお返しようと思いましたが、中々機会を得られず、財布の拾得から三ヶ月も経ってしまったことを申し訳なく思います」
 そして、開田さんは手提げかばんから、ジップロックに入った財布を机の上に置き、深々と頭を下げた。
「開田さんのお気持ちも分かります。私としては、遺留品があるだけでも幸せなんです」
 私はそう言って、ジップロックに入った財布を見つめた。
 私としても、財布を見て誰のものか分かるわけでも無かったが、開田さんは丁寧に、免許証を財布から取って、よく見えるように同封してくれていた。
 その免許証には、間違いなく私の兄の氏名と顔写真があった。
「本当に、ご丁寧にありがとうございます」
 私はそう言うと、掠れた免許証を見つめ、両手でジップロックを持ち上げ、かばんの底に仕舞った。
 開田さんはそれから、自身の行為に正当性が見出せないらしく、度々私に謝られ、充血した目をしばたたきながら、
「先程お話した、財布を拾った理由は、恐らく、私の嘘です。私はそんなに高尚な理由で拾ったわけではなかったはずです。ただ、面倒を先送りにしようという気持ちと、少しの偽善が入り混じった行動だったと思います。私は、拾った財布を見るたびに、罪悪感に駆られ、警察に行くこともできずにいました。全て、私の偽善と、当時の記憶を複雑に脚色してしまった私の過失です」
 というふうに言った。開田さんの目からは、熱いものが溢れていた。
 私はそれに何の言葉も返すことができず、目頭が痛くなり視界がぼやけた。
 私が再度、
「ありがとうございました」
 と言うと、開田さんは声を震わせながら、
「申し訳がありませんでした」
 と、再び謝られた。
 私が立ち上がり開田さんに向かい一礼すると、開田さんも無言のまま私にお辞儀した。
 お辞儀から上がった開田さんの顔は、呵責の念が滲んでいた。
 ドアの開閉音が聞こえた。アイスコーヒーに入っていた氷は、全て溶けてしまっていた。店内を見渡すと、私以外客は居なくなっていた。
 開田さんは極めて優しい方で、歪な感情がありながら、我々遺族の事を慮り、財布を保管してくれていた。その行為は、正解があるわけでもなく、また彼が自身を責める必要もなかった。
 財布を自らの手で届けることは誰しもができることではなく、私は深い感謝を覚えると同時に、それが彼なりの贖罪の形であったのかと思った。
 私はカフェを辞して、一人暮らしのアパートへ帰った。
 結局、開田さんが発見した遺体が兄かどうかは分からなかった。ただ、財布のみがここにあった。
 しかし、開田さんが甚大な努力をもって届けてくれた財布には、引き取り手が見つからなかった。
 両親と兄の関係は、決して良好とは言い難かった。癇癪持ちで、心情を汲み取るのによく苦労したらしく、度々良からぬ問題を起こしていた。
 開田さんから連絡があり、私が行くことになったのも、家族が不出来な兄の遺留品や、最期に関心があまりなく、押し付け合いの末、私に白羽の矢が立ったに過ぎなかった。
 私と兄は小さい頃から喧嘩が絶えず、兄が高校生になる頃には我々は既に会話らしい会話はしていなかった。
 兄は友人もあまり居なかった。細君はいたが、生前、関係が冷めきっていると噂を聞いていた。
 遺体のない葬式はごく小規模で執り行われ、参列した人々もあまり悲しんでいる様子はなかった。
 私はそれから、一応、兄嫁に電話を掛けた。電話口から喧騒と無愛想な声が聞こえた。遺留品が見つかったから、届けますかと聞くと、向こうは、いらない、もう離婚届は受理されたと答え、電話は切れた。
 その後、休暇の隙をみて私は両親に会いに行き、財布を持っておくか聞いたが、両親は磯臭い財布を気味悪がり、私の胸に突き返した。
 私は、開田さんがようやく届けてくれた財布が、開田さんの気持ちと無関係にぞんざいに扱われている事に悲観した。
 兄が生前の行いのために煙たがられることは、仕方のないことだと割り切れる。しかし、せめて、私だけは開田さんの人情ある行動を無下にしないよう、財布を丁寧に洗って保管した。
 今年も、磯の匂いが部屋の中に漂っている。そして、頭の奥に仕舞い込んだホコリまみれの記憶が、綺麗に洗濯され引っ張り出される。
 私は、人望のない兄の不慮の死を、私一人の心の中だけでも、意味あるものとして昇華され、磯の匂いを嗅ぐたびにこのことを思い出させてくれる開田さんにたまらなく感謝し、それと同時にあの時の開田さんの悲痛な顔が蘇ってくる。
 財布を届けてもらった翌年、こちらから電話を掛けてみたが不通であった。私は彼の住所も知らず、名前も苗字しか知らないのである。
 開田さんが今、どうしているかわからないが、私は毎年春になると、優しく穏やかな彼の、心からの幸せを願うのである。

桜の咲く頃

執筆の狙い

作者 小原
i118-16-42-60.s41.a033.ap.plala.or.jp

約4400字です。人間性の複雑さを表現したく作成しました。ご指導よろしくお願いいたします。

コメント

fj168.net112140023.thn.ne.jp

拝読しました。

読みやすく情景も解るのですが、直ぐに違和感を見つけた為にミステリー小説のつもりで読んでみました。が、結局そうではないのに驚いたまま読了です。

というのは、

海上での溺死の場合、死後4ヶ月も経っていれば大抵が骨だけになります。
季節的に夏場であれば腐乱の進行が速いことが予想される為、発見された水死体の状況から考えると、死後1ヶ月は経っていない状況です。よってこの死体は兄とは別人だとわかります。
警察も、水難事故とは切り離して考えるのが普通ではありませんかね。

夜の雨
ai225095.d.west.v6connect.net

「桜の咲く頃」読みました。

この作品は二通りの世界観で読める内容でした。
ひとつは冒頭からの文体の文章に違和感があり、これって伏線としてこういった描き方をしているのだろうかと思いましたが。

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 カフェの窓からは、しきりに光る車のテールランプが見えていた。マフラーから白い煙を出しながらゆっくりと走り行く車から目を背け、私は腕時計を見た。
 注文したアイスコーヒーには水滴がキラリと光り、机にポタポタと落ちていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
しきりに光る車  ← 車が光るとは、どういうことかなと? 不思議な光景だと思う。(テールランプがしきりに光っているということなのだが、書き方で不思議な味付けになっています)。
マフラーから白い煙を出しながら ← 今どきの車にしては珍しい。(ブレーキとアクセルでこうなるのか)。
机にポタポタ(水滴)と落ちていた。 ← 机(テーブル)に水滴がポタポタ落ちるというのを映像として見るとコマ送りしているようで不思議を感じる。
ということで、御作はさりげなく伏線を張りながら「SF作品」の物語なのかと。
そういう発想でラストまで読み進めると、内容を少しいじると充分にSF小説になるので面白いと思いましたが。
あとで、御作を膨らました妄想を書きます。

もう一つは現実的なお話で、作者さんはこちらを狙って書いたのだろうと思いました。
「開田」さんという方が主人公である「飯田」の兄の財布を海辺の砂浜で拾った。
それより以前に海難事故がその海であり飯田の兄が事故に遭った遊覧船に乗っていて、死体が上がっていない。
海辺には腐乱死体が漂着しており警察に届け出た開田さんは取り調べの煩わしさに精神が摩耗した。
財布はそれからの後日に拾ったが、警察には煩わしいので届けずに家に持ち帰り、日にちが経ってから、持ち主の実家に連絡して主人公の「飯田」がカフェで待ち合わせてもらった。
御作ではその開田さんという方の人物像が詳しく描かれており、人間が掘り下げられていた。
それと兄の財布から両親とか兄嫁(離婚手続き中)そして主人公である「妹」との人間関係やら距離感やらが描かれていました。
兄が疎んじられているような内容が書かれていましたが、主人公も兄と距離をとっており、このあたりの人間関係の描き方が文学になっています。
結構人物像が掘り下げられてそれらが情景にうまく溶け込むように描かれていたのではないかと思いました。
こちらの現実的なお話が本筋なら御作の文章はいくつか荒い点があるので文章にもう少し気遣ったほうがよいと思います。

御作をSF作品として読んだ場合はもちろんこのままでは、SFにはならないのでどうすればよいのかを書きたいと思います。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 カフェの窓からは、しきりに光る車のテールランプが見えていた。マフラーから白い煙を出しながらゆっくりと走り行く車から目を背け、私は腕時計を見た。
 注文したアイスコーヒーには水滴がキラリと光り、机にポタポタと落ちていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
まず、冒頭のこの情景描写ですが、いま私たちが住んでいる世界とは違う事になっている。
別の世界観の「世界での物語」の冒頭という事になる。
そこでは遊覧船の海難事故が起きて多数の者が亡くなっているが、主人公の兄の死体は現在発見されていない。
ということで、御作がラストまで進展しますが、この続きがあります。
亡くなったと思っていた兄が帰ってくる。
それも不思議と人柄が変わっている。
なので兄が家族のなかに溶け込んだりして一見ありふれた平和な日常が始まるが。

兄の体の中には未知の生物が潜んでいた。
海難事故も未知の生物が絡んでいた。
海の中から新しい生物が出現していて人間界へと進出を開始していた。

「開田」さんも、あの海で腐乱死体を発見したときに未知の生物に冒されていて、そのあたりが御作の続きで明らかにされる。

という具合にちょっと考えただけでこのような展開が御作から可能になります。
冒頭の違和感がある文章は地球の物理的な状況が現在と変化しはじめているから、あのようになるという伏線でした。

以上です。

御作は普通に文学作品として読んでも味があり面白いです。
情景とか人間関係とかを絡ませて描くのが絵になっています。
SF作品にも転用が可能では(笑)。

それでは頑張ってください。


お疲れさまでした。

小原
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 凪さん

 ありがとうございます。
 凪さんの言う「違和感」も、おそらく夜の雨さんが指摘した所と同じ所だと思われますが、あれは、私の表現が拙いだけでありました。
 水死体については、仰るとおりです。
 物語を書き終えた段階で、ちゃんと日付を入れたほうが分かりやすいかなと思い追加したのですが、かなり初歩的な失敗をしてしまいました。
 日付を入れたことで様々な所で矛盾や歪みが生じ、それらを必死に修正しましたが、見落としていました。

 これからはもっと丁寧に推敲します。

 ご指摘と感想ありがとうございました。

小原
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 夜の雨さん

 ありがとうございます。
 冒頭部分は全て私の間違いであります。

 光る車→純粋エラーです。おしゃれかなと思って書きました。

 マフラーから白い煙を出しながら→飯田と開田の対話の季節を夏から冬に変更したので無理やり挿し込んだものです。
 今どきの車って排気ガス出ないんですか? 

 机にポタポタと落ちていた→私は指摘されても暫く違和感に気付けませんでした。確かに水滴がポタポタ垂れ続けているような描写で、不思議です。

 コップの水滴が垂れている、腕時計で時間を確認、この二つの文章で主人公が結構カフェで待ってる感を出したくて書きましたが、これも推敲不足で、冬場にアイスコーヒーを頼んで、またそれが水滴の垂れるほどになるのは、少しおかしいです。

 ごめんなさい、伏線でもなんでもなくただ確認不足なだけでありました。

 それと、主人公は「弟」の設定で書いていました。
 ですが、先程読み返したところ、確かに主人公の性別は明かされていないし、会話や考えも少し女性じみた所があったと思い、反省しています。

 SF設定、面白く拝読させて頂きました。私は想像力に乏しいので、とてもこんな物語を考えるのはできません。最初、SF風にしてみようと思いましたが、全くアイディアが浮かばなくて諦めました。

 ご指摘とご感想有難うございました。

浮離
KD111239171189.au-net.ne.jp

このお話の語り手の現在地ってどこですか。

それを決定しているのは書き出しの地点だと思うんですよね。
ということは開田と待ち合わせたカフェの場面は回想になるはずで、その上で同じ語り手が現在進行形式で場面の逐一を語り進めるわけなんですよね。

単純な様式としては、

>彼と対話したカフェでの記憶が鮮明に呼び起こされるのである。

の後に空行を入れた方がわかりやすいはず、っていう提案は一つの案として、その上でやっぱり違和感を覚えるのは、

>開田と待ち合わせたカフェの場面は回想になるはずで、その上で同じ語り手が現在進行形式で場面の逐一を語り進めるわけなんですよね。

という点で、先に指摘した語り手の現在地という構成から感じさせられるにはすごく違和感のある語り口のはず、ということなんですね。
平たくいうと、紙芝居か読み聞かせに態勢として近い距離感のような気がするってことですね。
時制とか物理的な意味ではないので勘違いしないで欲しいです。

これが映画とかだったならたぶん違和感ないはずなんですけど、逆さまに言えば“小説“として書き進める上での場面想像かその文章化について、映画と混同したようなその処理の違和感に気づかないというか、そもそも違和感として知覚しない人がこのサイトには結構多いというか、ほとんどの人がたぶん問題にしないのかもしれないって、近頃個人的には理解して諦めるものなんですけど、なんとなくわかる気がするなら気にしてみてほしい気はします。

身元がわかっているなら遺体、わからないものは死体とするらしいニュース規則みたいなことは時代の変化もあるでしょうからよくわからないですけど、用いる言葉のファクトを求める余地は感じさせられる気がするだとか。

>それは人の遺体であった。

って、ほとんど三人称的な書き方だと思うんですよね。
っていうのはつまり、このお話って三人称にしてしまうのが一番手っ取り早い修正案のはずってことで。
それって単に様式的な適合不適合ってばかりの話ではなくて、もしかしたら単純に書き手の筆力の問題というか、どうしてそう感じさせられるのかといえば、語り手の兄のエピソードや家族環境、シンプルには語り手と兄との関係性というものが序盤から想定されていたものなら、書き出しから語り口はきっと違うものになるはずのように感じさせられるし、開田に対する物腰こそ違ったものになるのは当たり前の人情として作為に反映されるもののように想像させられるってことなんですよね。


>自室の棚の上にあるよれた財布からは、春先になると不思議と磯の匂いが香ってくる。
 私は磯の匂いがするたびに、十年ほど前の、彼と対話したカフェでの記憶が鮮明に呼び起こされるのである。

書き出しの文ですけど、“財布"、“春"、“磯の匂い"、“彼"、“カフェ"、“記憶"といった情報が与えられるわけなんですけど、そこに“兄“がいないのはおかしい、とかそんな馬鹿みたいなこと言いたいはずはなくて、シンプルに“ニュアンス“として読者を騙してるというか、騙してもいいんですけどこの場合って作為として無為に逃れたもののように感じさせられなくもない、ってことなんですね。
つまり何が言いたいかって、このお話は終盤に向かう畳み込み方がどうにも設計が悪く感じさせられるし、都合で取り付けた巻き取り方のように感じさせられることがすべてを証明してしまう気がする、ということなんですよね。




 磯の匂いが鼻を掠める。
 そそのかされたように、滅多に触れることのないそれを手に取り、懐かしさとも違う感触に脆く慄きながら、鼻を寄せる。春の葬礼。
 よれた財布。この枯れた匂いは、十年前に彼と対面したカフェから染みついたものだ。磯の匂いは彼が連れてきたもので、疑いの余地もないことを私はいまだに信じられずにいるのかもしれない。まったく当てにならないのだ。




ものすごく評判の悪い“勝手改稿"というあたしのいつもの指摘手段なんですけど、褒めてほしいだけの書き手なら付き合ってくれなくて結構ですというかむしろ読まないでいいです。

原文の中で違和感として真っ先に目につく

>香ってくる"

という表現を、個人的には選択したくなかった点を観察してほしい気がするんですね。

>ミステリー

とか上で馬鹿なこと言ってる人がいるんですけど、これがミステリーでもそうではなくても

>香ってくる

という書き方が“ミスリード“として許容される“小説“なんて美徳はありえないと思うんですよね個人的には。
書き手にそれを騙す手口として企むような思惑があったとは思えないですし、

>人間性の複雑さを表現したく

という狙いかテーマを死体なる“複雑さ“に託したがる無邪気なお話とは到底読み取れないもののはずですし、その上で語り手がその家族たる当事者であることも含め、

>香ってくる

という表現は十年越しにも変性して受け入れられるものとは到底感じさせられないのが普通だと思うんですよね。
普通であるべきではない目的があるのなら、それとしてふさわしい物語が用意されるはずなので、やっぱり肯定的な説明は難しいはずで。

>不思議と

という表現も個人的にはアウト判定ですが、一般的にはセーフでもいいのかもしれないギリギリ感として、もっと個人的な語彙を探すべきだと個人的には感じさせられたものです。


>人間性の複雑さを表現したく

って、開田のことですか。兄のことですか。語り手自身のことですか。
たぶんそのすべてのはずなんですけど、それはもちろんわかるけどそうは感じさせられにくいか書き損じのように感じさせられるのは、やっぱり終盤に向けての後付け感のある兄エピソードや家系エピソード、開田への想いの浮遊感っていうことごとくのご都合感に根ざすところが多いはずで、端的にこのお話の問題点を指摘するなら、人称視点や物語としての基本設計の悪さ、ということに尽きるんだと個人的には感じさせれたものなんです。


気を悪くさせたなら申し訳ないですけど、“小説“っていうそれぞれの理解を集わせてるだけですから、ムカついたならムカついたなりの“小説“っていうあなたの理解や主張をふさわしく披露することです。


お邪魔しました。

小原
sp49-97-88-69.mse.spmode.ne.jp

 浮離さん

 ありがとうございます。

レスポンスが遅れたことをお詫びします。
 
 私の好きな作家さんがよくそういう物語の書き方をされるので、真似してみました。ですが、私ではやっぱり技術不足のようです。
 確かにこの語り口は違和感があり、私も最初に読んだときは回りくどい説明だと思いましたが、段々その回りくどさと、過去と現在が交錯するような語り口が好きになりまして、なんとかそういうふうに出来ないかなあと、試行錯誤した次第であります。

 度々指摘されている、「設計の悪さ」は、痛いところを突かれたと思いました。文章を付け足したり、消したり、それによって生まれる矛盾を解消したりと様々やった結果の歪みだと思います。

 勝手改稿は、非常に分かりやすかったです。私にはちょっとこのようには書けません。

 香ってくる、不思議と、という言葉に関して、やはり私の語彙力というか、表現力の足らなさを痛感するところであります。

 非常に無礼であることを自覚した上で言いますが、出来るのならば浮離さんが改稿した全文を読んでみたいと思った次第であります。

 丁寧に読み込んでいただいた事がよく分かります。

 ご指摘とご感想ありがとうございました。

浮離
KD111239171189.au-net.ne.jp

もう誰も感想を書き込まないみたいですし、切られた啖呵をやり過ごせるほど言うだけ風情のつもりはないので、あたしなりにこのお話を改稿させていただきました。
なかなか時間が取れなくて遅くなってすみません。

ってそんな待ちかねたものでもないですか、そうですかそうですね。

ではではとはいえ参りましょうか。





『岩礁』

 磯の匂いが鼻を掠める。
 そそのかされたように、滅多に触れることのないそれを手に取り、懐かしさとも違う感触に脆く慄きながら、鼻を寄せる。春の葬礼。
 よれた財布。
 この枯れた匂いは、十年前に彼と対面したカフェから染みついたものだ。磯の匂いは彼が連れてきたもので、疑いの余地もないことを私はいまだに信じられずにいるのかもしれない。まったく当てにならないのだ。


 しきりに行き交う車が放つ赤や黄の点滅、マフラーからゆらゆらと立ち上る白い煙。見るともなく見返す腕時計が示す時刻すら、窓外の景色と見境がないらしく曖昧だった。びっしょりとグラスを濡らす水滴は、氷が馴染み薄まりゆくアイスコーヒーの無念を食い止める懸命な汗だった。そわそわと、そんな些細な不機嫌に脅かされながら何度も入り口の扉を睨んだ。
 ようやく現れた姿を一瞥して、すぐに彼だと気付いた。同じ様子で軽く会釈するその殊勝な物腰に、ぞっと毛穴が開いた気がした。臆面もなく決意を据えた表情。待ち合わせ時刻の五分前に現れた彼に、とっくに羞恥を撃ち抜かれていたのかもしれない。
「開田です。この度はご足労をお掛けしました」
 口上を果たすも早々に、びっしょりと汗をかいたグラスを見逃さなかった彼は、それを自身の不得にすり替えてしきりに詫びたのだ。そんな彼に一体どんな罪が認められたものか、戸惑うことすら覚束ない羞恥に震えた。
「ようやくお会いできて嬉しく思います。どうかこの度の無礼をお許しください」
 対面に座った彼は私と変わらない視線の高さながら、やけに背筋が伸びた口上に似つかわしく段取りに固く徹して見えなくもなかった。
「まさか。こちらこそ大変なお世話をいただいて申し訳ありません」
 果たしてそんな言い方でよかったのか、おろおろと逃亡を企てたがる視線の先で、ますます大量の汗にまみれたグラスまでもが縮こまって見えた。薄まりゆくアイスコーヒーの行方におろおろと思い逃れるより仕方がなかった。
 思い返すなりにも、まったく気の毒でしかない。
 その顛末を逐一語り伝えることに澱みなく徹した彼のことを、私はまったく信用していなかったはずなのだ。どうしてそこまでのことを詳らかに伝える必要があったのか、それはただの少しも、彼自身のこととは思い難かった。
 少しも罪などない。だからこそ彼は、彼として私の前に現れるより仕方がなかったのだ。
 法事の為の帰省、束の間訪れた懐かしい景色にはあるまじき、あってはならない事態を巻き起こしたのは彼ではなく、まったく彼のことでもないのだ。
 私でもない。
「率直に驚きました。こんな言い方は不謹慎です、ですが実際に目にすると。……現実感のないものですね、戸惑いました」
 まったく現実感のない話として、まったく同意するしかなかった。
 懐かしい浜辺の景色に紛れ込んだ、流れ着いたらしく横たわるもの。そんなものを一体どんな人間なら冷静に、然るべく受け止めて対応出来おおせたものなのか。なんなら悲鳴をあげて、もっと乱雑な、お節介で野次馬根性に塗れた露骨な事態として、寄り付きようもなく葬り去って欲しかった、そんないじけて開き直るようなことを沸々と、薄暗く思い浮かべていた。
「なにぶん田舎でのことです、思い当たらないほうが不自然というか。警察も、取り掛かりながらまずはそんな向きからの話でした」
 不幸にも彼が遭遇した事態の四ヶ月前のこと。件の浜辺から二十キロほど離れた海域で遊覧船が岩礁に衝突して沈没する海難事故。誰もが連想して然るべき事態、その顛末の一部としてつきとめられた私と、あまりにも丁寧で気の毒だっただけの彼が他愛のないカフェで向かい合う。まったく頓狂な、とはいえ深刻な事態に当該する者らしく現実感を着ることの覚束なさに、むしろどこか他人事らしい行儀にばかり意識が駆られるのは面倒だった。
「身勝手な恨み節と思っていただいて構いません」
 差し詰め断りを述べた彼の話ぶりは意外なほど忌憚なく、とはいえそれは流れ着いたものや世話を掛けた私に対するものなどではなく、あくまでも手続きか段取りらしく付き合わされるばかりだったことごとへの機微なる苛立ちに近いものだったはずだ。
 幼い頃によく砂遊びをしたという浜辺にその日彼が求めたはずのもの。
 法事を終えた安堵か、やれやれとした逃避か。私には知る由もない、その日懐かしく訪れた場所で待ち受けていた景色に、彼が思い付かされた心境こそ知る由もないのだ。
 気の毒に思う。
 それは十年の月日が過ぎても未だ変わらぬ私の心境であり、彼に仕出かした罪への悔恨に違いない。
 決意の如く、あまりにも固い面持ちで彼が差し出したもの。
「中身を見てしまいました。気は引けましたが、そのときすでに私の中には逃れ難い見解があり、それを裏切ることは出来ませんでした。すべきではないと、あらぬ後悔に怯えました」
 法事の為の帰省のはずが、流れ着いたものにまつわる手続きにほとほと付き合わされるうちに一週間が過ぎていたというのも、まったく傍迷惑な話でしかない。
「いえ、あなたのご判断に敬服します。申し訳ありません」
 善良に察知してしまうその顛末に怯えた彼の心境を思えば、それ以外に言えることなど思いつきようもないではないか。それは私にとってすでに他人事などではあり得ないではないか。
「犯罪者が再び現場に還る、なんてミステリーか刑事モノなどでよく言いますが、なんだかそんな心境でした。もちろんこれは私自身への皮肉ですが」
 そんなはずはない。彼は懐かしい景色をそのままのものとして、改めて目に焼き付けて持ち帰りたかっただけに違いない。少しだけ緊張が解けたらしく薄く笑みを漏らした彼は、きっとその日もそれと似た顔つきで浜辺の景色を眺めたかったはずなのだ。



続きまあす。

浮離
KD111239171189.au-net.ne.jp

 偶然にしても出来過ぎじゃないか。思い詰めたくなる気持ちも不思議ではない。
 浜辺が彼に託した。そんな意思が働いた結果だと、そんな逃れ難く巻き込まれる心境か思惑に包まれても不思議ではない。彼にとってはそんな場所であったことを私に否定など出来るはずはないのだ。するはずもない。
 見渡す浜辺に残る忌まわしき残像。
 それは跡形もなく消え去るはずだった。その為に彼は一週間もの不毛な手続きに付き合わされたのだ。すべてが拭われたものであるべきだった。彼は、それを確かめたかっただけに違いないのだ。
「偶然目についた不思議すら思いませんでした。私の目にははっきりと、またしても待ち受けたものかとさえ。それまでに過ごした一週間の後遺症と言ってしまえば笑い話にも聞こえそうですが、実際には打ちひしがれるような発見でした。それほどはっきりと目についた気がしたのだと思います」
 なんともうんざりとしたことだろう。
 見知らぬものにすべてを依存されるような境遇に晒されることは、如何に気味の悪い心持ちであったことか。手掛かりとした財布の中身、保険証や運転免許証など、そこに記された名前や顔写真をどんな思いで情報に照らして認めたことか。かくして一致する海難事故の被害者という事実との再びの遭遇にどれほどのため息を重ねたことか。
「再び警察に立ち返る、届け出る気力はとうに失せていました。脆く節くれ立った心境を暴かれた気がして、狼狽えました。情けない話で言い訳のしようもありません」
 それを伝える為に、これまでの時間が必要だった。それほどの人情を私が責められようはずはない。それは私が、行方知れずとしてそんな帰還を仕出かした兄が彼に押し付けた不幸でしかない。自らの手でそれを私に送り届ける為に必要だったあらゆる事情を整えるために必要だった時間を、一体誰がどの立場から責められたものか。私はその日まで、行方知れずだった兄のことなどこれっぽっちも心に留めることなく生きていたのだ。そんな人間が、どうして彼の困惑と悔恨を責められようか。
「すべての責任は、私ども家族にあります。あなたは偶然に、私どものとんだ面倒に見舞われたに過ぎません。これほどまでのお世話をいただきながら、お詫びのしようもありません」
 生来の癇癪持ちで、幼い頃から両親の手を焼かせていた。それも一つの眺め方でしかないことは、今となっては当たり前に思い当たる自惚れた見立てに違いないのだ。わがままで堪え性のない兄を、堪えて繋ぎ止めることを諦めたのは私たち家族に他ならない。兄は家族であることを早々に諦め、行方を眩ませた。眩ませるより仕方がなかったのかもしれないなどと今更言い腐れるつもりなら、それはますます私たち家族の過失を深めることでしかない。私たち家族は、家族らしく家族であることをとっくに諦めていた。すべては消え失せたつもりでいたのだ。
「とんでもありません。お話しさせていただいたことは、私の嘘かもしれません。ずっとそんな気がしていた。私はただ、面倒を先送りにしたかっただけ、その為に必要だった偽善とそれを言い負かすための時間を、今日まで要してしまったのに違いありません。警察は私が駆られた思惑になど用はありませんでした。このお届け物ばかりはあの浜辺における私の、すべては私の偽善と言い訳による過失です」


 あの日の記憶は、彼が言い残したそんな一言と、カフェのドアチャイムの音色とともに途切れたままだ。
 両親はこの財布を一目見やったきり、忌々しく遠ざけた。
 突き返されるも同然に持ち帰ったきりのそれを、決まりの春の日にすげなく眺める。それは彼に対するものではなく、兄に対する遺恨だ。
 十年前のあの日以来、彼との連絡は途絶えたきり行方を辿る伝もない。いや、果たしてそうだろうか。
 彼はあの浜辺で育った。
 彼に辿り着く為の情報は、場所と季節、それだけで十分のはずなのだ。流れ着くものも、辿るべき遺留品も必要ない。
 岩礁に散った。
 それは兄のみならず、私たち家族のことにこそ違いないのだと、誠心誠意思い知らされたはずの私はあの日以来ずっと、彼に辿り着くに足る当然の術を偽り、遠ざけ、偽善であると自ら言い逃れる為の言い訳にこそ見苦しく囚われ続けたままだ。
 彼との再会を願う。
 その気持ちに偽りはないかと自ら問いかけても、まったく当てにならないのだ。彼はどうして、あれほどまでに思い詰めながらこの財布を私に届けることを諦めなかったのか。
 春の訪れに脳裏を掠める私の悔恨は、兄のことではない。そんな春に馳せる磯の匂いを引き連れた彼とあの浜辺は、拭うべき悔恨の行方を今も案じている。そんな気がするだけで羞恥に震える。そんな気がするだけで、まったく当てにならないのだ。財布の枯れた匂いに触れても、その理由に私は辿り着かない。
 彼はあの浜辺で育った。
 私は流れ着いた兄を、岩礁から眺めている。


 了






ざっくりとなんですけど、情報の要不要をあたしなりにかなり切り分けさせてもらった感じになっていることはおわかりいただけるかと思うんですよね。
それって然るべきところとして、先に指摘させてもらった

>紙芝居か読み聞かせ

っていう語り口の質感をあたしなりのイメージとして整えるにはなくてもいいとする情報がかなりあった気がする、ということだと思うんですね。
そんな上に、さらには"回想"としながら語り手の現在地はあくまでも十年後の現在の春の日、という人称視点を可能な限り保ちながらのエピソードの情報開示、っていう語り口をあたしなりになんとか追っ付けてみた感じだったりします。


原文において何よりの問題としてあたしが感じさせられる点の一つとして"兄"という後付け感がかさばる構成というか物語のチョークポイントの是正と、

>開田さんが今、どうしているかわからないが、私は毎年春になると、優しく穏やかな彼の、心からの幸せを願うのである。

っていう個人的にはまったく腑に落ちない脈絡不全みたいな閉じ方の再検討ということがあたしなりには主軸となるテーマでした。

方向性としては、開田という実直な丁寧自虐キャラに対する語り手という家族問題を抱えたキャラがついつい思い当たらずにはいられないコンプレックスと、"開田と浜辺"に対する"語り手と兄"という個々の環境において同軸で作用する陰陽も甚だしい思考や行動っていう現在地の対比をタイトルにもなる現場になぞらえて双方の共有か同一世界観として閉じに落とし込める構造を目指した感じです。


原作と比較してかなり文量が減りましたし、情報もタイトになってるかと思いますが、書き手の想定してとはまた違った筆筋なり世界観として楽しんでもらえたなら嬉しいです。

良い機会をいただいてありがとうございました。

えんがわ
M014008022192.v4.enabler.ne.jp

会話場面をもう少し工夫して書くとか。
事務的な手続きだけではなく、ちょっとした人間味を入れたりとか。地の文と変化があるだけでも読みやすさが出ると思う。

文章自体はひらがな、カタカナ、漢字のバランスというか、なんかとても良い雰囲気でした。
なんか、じれったい、煮え切らないような後味も、たぶんこれは作中の狙いの範囲のような気がしましたー。

こういうのって、本人はかえって忘れてほしいと思ってたりするのかな。

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